「新しいヒーティングプレートを買ったのに、お湯が沸くのに時間がかかる…」
もしそう感じているなら、安心してください。それは不具合ではなく、プレートが「育成期間」に入っている証拠です。
実は、IHヒーティングプレートは「使用回数を重ねてなじんだ状態の方が、圧倒的に沸騰時間が短縮される」という性質を持っています。
今回は、なぜ使い込むとタイムが縮まるのか? その3つの科学的根拠と、新品のプレートを安全に・最速で戦力化するための「正しい慣らし(シーズニング)手順」を徹底解説します。
なぜ「使い込み」で速くなる? 3つの科学的根拠
「なじむ」という感覚的な言葉の裏には、物理学的な理由が明確に存在します。
① 放射伝熱の向上(色の変化は「機能」である)
新品のステンレスは、放射率が0.1以下と低く、熱を反射してしまいます。 しかし、使用に伴う熱酸化で表面がわずかに変色すると、放射率は0.6以上へと劇的に向上します。 CoFikaのプレートは変色防止加工で見えにくいですが、微細な表面変化により、プレートとマキネッタの隙間を飛び越えて熱を伝える力が強まるのです。
② 接触コンダクタンスの改善(ミクロの整地)
熱サイクル(加熱・冷却)を繰り返すことで、金属表面の微細な凹凸が押し潰され(塑性変形)、マキネッタの底面にぴったりと沿うようになります。 さらに、製造時の「残留応力」が解放されることでプレート自体の歪みが取れ、固相熱伝導(直接触れている部分の熱移動)が飛躍的にスムーズになります。
③ IH制御との調和(安全装置の回避)
ここが最も重要です。 熱伝導が悪い(新品)状態だと、プレートの熱が水に移動せず、プレートだけが異常に熱くなります。するとIH側の安全装置(過熱防止リミッター)が働き、勝手にパワーを弱めてしまうのです。 使い込んで熱伝導が良くなると、熱がどんどん水へ逃げるため、IHは「まだ加熱できる!」と判断し、フルパワーで運転し続けてくれます。 結果、沸騰時間が短縮されるのです。
【実験データ】「育成期間」のリアルな推移
では、実際に何回使えば「なじみ」が完了するのでしょうか? 性能の変化は直線的ではなく、「最初の10回前後で急激に変わり、その後安定する(対数的な飽和曲線)」という特徴があります。
※ただしこれはプレートの種類、個体差、慣らし環境にもより変化します。
まずは「1年間使い倒したプレート」と新品を比較した結果をご覧ください。
📸 1年使用 vs 新品:見た目と性能のギャップ

- 左:新品 (New)
- 右:1年使用 (Used)
ご覧の通り、若干の色味の変化やくすみはありますが、一般的なプレートのように茶色く焦げ付いたり、真っ黒に炭化したりしていません。 直火に当てていてもこの美しさを保てているのは、CoFika独自の表面加工のおかげです。
「見た目が変わらないなら、性能も変わらないのでは?」 そう思うかもしれませんが、実は沸騰タイムには劇的な差が出ています。
| プレートの状態 | 沸騰タイム (80ml水) | 結果 |
| 新品 (New) | 3分 | 遅い |
| 1年使用 (Used) | 1分 30秒 | 圧倒的最速! |
📊 覚醒までの道のり:最初の8回の記録
では、新品がこの「最速状態」に近づくために、最初の数回でどう変化するのか? 新品を開封してすぐのリアルな記録がこちらです。回数自体はあくまで目安で個体差も結構あるかと思います。
| 回数 | タイム (80ml水) | 状態・分析 |
| 1〜2回目 | 3分 | 遅い。 表面がまだ硬く、IHがパワーを抑制気味です。 |
| 3回目 | 2分30秒 | 一時的に向上。初期なじみが始まった兆候が見えます。 |
| 4〜6回目 | 3分〜4分 | 迷走期。 内部応力の解放による変形で、接触が一時的に不安定に。 |
| 7〜8回目 | 2分00秒 | 覚醒! 表面の平坦化と酸化膜の安定が完了。これ以降は安定して速くなります。 |
このように、最初の10回程度は「育成期間」です。 タイムが安定しなくても焦らず、じっくり育ててあげることが重要です。マキネッタ同様にヒーティングプレートも同時に使用しじっくり育ててみて下さい。
【参考】科学で見る「成長の3段階」
一般的な(コーティングのない)ヒーティングプレートの研究データによると、性能の向上は一直線ではなく、「最初の数回で急激に変わり、その後安定する(対数的な飽和曲線)」という動きをすることが分かっています。
| フェーズ | 使用回数(目安) | 表面状態 | 放射率 ϵ | 熱伝達効率 | ユーザー体感 |
| 初期(新品) | 0 〜 5回 | 銀色光沢(研磨面) | < 0.1 | 低 | 「沸くのが遅い」「火力が弱い」 |
| 遷移期(急変) | 5 〜 20回 | 淡黄色 から褐色へ変化 | 0.2 〜 0.5 | 上昇中 | 「少し早くなった気がする」 |
| 安定期(完了) | 20回 〜 50回以上 | 暗灰色、黒ずみ、鈍色 | 0.6 〜 0.8 | 高(安定) | 「これが本来の性能」 |
🦁 結論 データ上でも「最初の5〜10回の変化率が最も大きい」とされています。 つまり、「最初の10回さえ乗り越えれば、あとは天国」ということ。 やはり、まずは焦らず10回、使ってみるのが正解のようです!
【実践】安全かつ最速!推奨「慣らし」プロトコル
新品プレートを早期に戦力化するための「慣らし運転(シーズニング)」手順をご紹介します。
⛔ 【警告】絶対にやってはいけないこと
「空焚き(焼き入れ)」は厳禁です!
- プレートの変形・破損
- アルミ層の溶融
- IHガラスの破損 を招く恐れがあります。必ず以下の「水負荷運転」を行ってください。
✅ 安全な慣らし運転の手順
Step 1:洗浄 工場出荷時の油分を中性洗剤で完全に洗い流します。油が残っていると、ムラのある汚い焦げ付きの原因になります。
Step 2:水負荷(重り)を乗せる マキネッタのボイラー(タンク部分)に水を入れ、プレートの上に置きます。
Step 3:沸騰サイクル
- 中火(500W〜800W程度)で加熱し、沸騰させます。いきなり強火はNGです。
- 沸騰後もすぐに止めず、1〜2分そのまま加熱を続け、プレート全体を熱的に飽和させます。
- 電源を切り、プレートが自然冷却するまで待ちます(水で急冷するのは厳禁!)。
Step 4:繰り返し これを3〜5回繰り返します。 これにより、初期の急激な酸化被膜形成と、残留応力の解放(アニーリング)を、安全かつコントロールされた状態で行うことができます。
🦁 ぶっちゃけ、「慣らし」は必須?
ここまで「正しい手順」を解説しましたが… 正直、お湯を沸かして冷まして…を繰り返すの、ちょっと面倒くさいですよね?(笑)
もちろん、最初にやっておけば最短で性能を引き出せますが、無理にやる必要はありません。 マキネッタが使い込むほどにコーヒーの油分が馴染んで「育つ」のと同じように、このプレートも「日々のコーヒータイムの中で自然に育てていく」というスタンスで全く問題ありません。
「昨日は4分かかったけど、今日は3分半になった!」 「お、今日は調子いいな」
そんな風に、毎日の抽出の中で少しずつタイムが縮まっていく「成長過程」を楽しむのも、この道具の醍醐味です。 焦らなくても、あなたのプレートは必ず最強に育ちます。まずは気楽に、最初の一杯を淹れてみてください☕✨
📝まとめ
マキネッタのような繊細な熱管理を要する器具において、プレートの状態は味に直結します。 なじみが完了したプレートは、立ち上がりが鋭く、理想的な抽出圧力を生み出します。
- 新品時: 遅くて当たり前。
- 慣らし中: タイムが暴れることもある。
- 育成完了: 爆速&安定。
「使い込むことで、変色が機能的なコーティングとなり、形状が最適化される」 このメカニズムを理解して、焦らずあなたのプレートを育て上げてください。10回を超えたあたりから、コーヒーの味わいも一段と向上するはずです!☕🦁
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CoFikaは「おうちカフェを全ての人に」をコンセプトにした、国内発のマキネッタ専門ブランド。
濃厚でクリーミーなクレマが楽しめるマキネッタ 「CoFika Crema Rich」 を中心に、
使い方や選び方、豆の比較、抽出のコツまで、マキネッタの専門情報を発信しています。

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