CoFikaを使用しているユーザーの皆様から、最近よくいただくリクエストがあります。 「もっと圧力を高められませんか?」 「もっと強烈なクレマを出したい!」 その熱意、痛いほど分かります。マキネッタ好きとして、より高い圧力、より分厚いクレマへのロマンは尽きません。 そこで今回、皆様の声にお応えすべく、抽出口の増圧バルブ内にある「バネ」の強化サンプルを作成しました。 しかし、単にバネを強くすれば全て解決するかというと、実はそう単純ではありません。 そこには「圧力」と「温度」、そして「味」が複雑に絡み合う、物理学的なジレンマが存在するのです。 今日は、バネ強度「1.3倍」の実験プロセスと、私たちが直面している技術的な壁について包み隠さずお話しします。
📝 1. 過去の失敗:「2倍」は強すぎた
実は以前、単純に「2倍の強さ」のバネで実験をしたことがあります。 CoFika Crema Richに標準搭載されているバネの強さ(バネ定数)は、約34g/mmです。これは「バネを1mm縮めるのに34gの力が必要」という硬さを示す指標です。
私たちは単純に「これを2倍(約68g/mm)にすれば、圧力も倍になるのでは?」と考えました。 しかし、バネの設計はそう甘くありませんでした。
🔧 設計の絶対条件:「長さ」は大きく変えられない
バネを強くする方法はいくつかありますが、マキネッタの抽出口という狭いスペースに収めるため、「バネの自由長(長さ)」を大きく変えることはできません。 もしバネを長くして強くしようとすると、今度は縮みきった時に隙間がなくなり(密着高)、コーヒーの通り道を完全に塞いでしまって物理的に液体が上がってこなくなります。
🛠 外径と内径での調整
そこで私たちは、長さは変えずに、「線径」や「外径・内径」を調整することで硬さを出すアプローチをとりました。 そうして作った「2倍バネ」を組み込み、いざ抽出実験へ。
💥 結果:コーヒーが一滴も出てこない。
バネが硬すぎて、ボイラー内の圧力が限界まで高まっても、バルブが全く開かなかったのです。 行き場を失った高圧の蒸気は、最終的に安全弁を突き破り、「プシューッ!」という音と共に横から排気されて終了。
この失敗から、「安全弁が作動する圧力(約4.5気圧前後)」よりも低い圧力で確実に開く設計でなければならない、という絶対的なラインを学びました。
今回の挑戦:「1.3倍」の狙い
2倍は無理でも、安全弁が作動する手前ギリギリの高圧ゾーンを攻めたい。 そこで今回新たに作成したのが、「バネ定数 約1.3倍」のサンプルです。割と控えめな定数にしてみました。コーヒーが上がってこないと本末転倒なので。。

計算上は、これで従来よりも強い圧力がかかり、安全弁の閾値までは余裕があり、クレマの量も増えるはずです。 しかし、開発チームには一つ、大きな懸念があります。
それが「抽出時間の増加と抽出温度の上昇による味の劣化」です。
【考察】圧力を上げることの「代償」
ここからは少し科学的な話になります。 「バネを強くする」ということは、それを押し上げるために「より大きな力(蒸気圧)」が必要になるということです。
🔥 物理の法則:圧力=温度の上昇
密閉されたボイラー内で高い圧力を生み出すには、水をより高温に加熱しなければなりません。 つまり、「高圧にする」=「抽出温度が高くなる」ことは避けられないのです。
ここで2つのリスクが発生します。
🧪 リスク①:雑味・エグみの発生(過抽出)
コーヒーは高温で抽出され続けると、焦げたような苦味や、渋み、エグみといったネガティブな要素が溶け出しやすくなります。 「苦すぎて飲めない」では本末転倒です。
🧪 リスク②:クレマの崩壊
さらに皮肉なことに、温度が高すぎるとクレマの泡が熱で不安定になり、逆に泡が消えやすくなる可能性があります。 「圧力を上げたのに、熱すぎて泡が弾けてしまう」という現象です。
2つのリスク観点から必ずしも圧力を上げることが正義かと言われるとそうでもないんです。良い抽出は全てのバランスが整って起きるもので、抽出口のバルブ圧を変えてしまうと今までの抽出条件を変更しないといけない場合があります。なので、仮にオプションとして販売した場合は玄人向けのオプションとしてしっかり説明したうえで販売致します。
結論:目指すは「強さ」と「味」の黄金比
皆様の「もっと圧力を!」という願いを叶えたい。 でも、CoFikaとして「美味しいこと」は大前提として譲れない。
「雑味が出ないギリギリの温度帯で、最大限の圧力をかける」
今回作った「1.3倍バネ」が、その針の穴を通すような黄金比になっているのか。それとも味が壊れてしまうのか。 これから実機での抽出テストと、徹底的な官能評価(味見)に入ります。
もし1.3倍が良い結果を出せば、オプション品として販売させて頂ければと思います! 最高の一杯を届けるための、地味ですが妥協できない実験。結果はまた後日、このブログで報告します!🦁☕
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CoFikaは「おうちカフェを全ての人に」をコンセプトにした、国内発のマキネッタ専門ブランド。
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